先月、Canonの6D Mark2を購入しました。
ずっと欲しかったレフ機。


私が最初に買ったカメラはFUJIFILMのX-T20というカメラでした。2018年です。それからずっとFUJIFILMユーザーで現在はX-T5です。いわば、ミラーレス・ネイティブ世代で、レフ機というものを経験せずにミラーレスから入りました。
それがなぜ、時代に逆行するようにレフ機を買ったかを書きます。
いい感じのアナログ感

Canonのレフ機に興味を持ったキッカケは、好きなフォトグラファーが使っていたから。Sam Aliveはかつて5D Mark2を愛用していたし、Ola Rindalはフィルム主体だけれどデジタルは5Dを使用している。最近はOmi Sakiさんの写真が好きですが、彼女は雑誌”コマーシャル・フォト”のインタビューで、現在も5D Mark3とMark4を愛用しているとおっしゃっていました。最近の彼女の写真集”Wanderlust”はフィルム写真のようなアナログ感があり(実際、インタビューでも「フィルムですか?」とよく聞かれると話していた)、写真のとしての手触りを感じるのですが、Canonの5Dシリーズだけで撮りきってるようです。
「アナログ感が好きなら、FUJIFILMのフィルムシミュレーションがいいんじゃないの?」
そういう意見もあると思います。ただどうしても、私にとってはX-T5の吐き出す画はわざとらしい。そもそも日本のカメラメーカーは、過剰な高画質化を追求しがちです。市場が盲目的に「高画質=良い」と信じているので、「高画質」「高画素」というフレーズがないと売れないという理由もあるのでしょう。
一方、フィルム・シミュレーションはその名の通り、フィルムという究極のアナログの再現を目指しています。ここにFUJIFILMのかかえる大きなジレンマがあり、高画質化とアナログ回帰の二律背反なものを共存させる宿命にあります。結果として、4000万画素へと一気に高画素化したX-T5が吐き出す画は、あまりにクリーンでシャープな画像を無理やりアナログに味付けしたようなチグハグな印象があります。
X-PRO2やX-100Fあたりの世代までは、画質と描写のバランスが秀逸で心動かすものがあったような気がします。フジのフィルム・シミュレーションは他社のカメラの「撮影モード」とは違う。そんな感覚がありました。でも、どうも最近は「エモい撮影モード」になってしまったという感覚が否めません。
アナログとは主観的であり、相対的なものです。色味がこうで、階調がこうで、といった客観的な定義はありません。10年前は最新かつ最高画質だったものも10年経てばアナログとなります。つまり、見る側の目が変わることで生まれるもの。
6D-Mark2が出す画は、今の最新のミラーレス機と比べるとアナログな印象があります。それが色味なのかノイズなのか、客観的に言い当てることは困難ですが、確かにある。これは最新のミラーレス機では出せない「味」のようなもので、私にとっては価値があるものでした。
APS-CはAPS-C。フルサイズはフルサイズ。

2017〜2018年くらいでしょうか。フルサイズからFUJIFILMのXマウント(APS-C)へ移行する人が多かった時期があったように思います。
「この写りで、この価格ならフルサイズに固執する必要ないよね。持ち運びやすいし、なんといってもフィルムシミュレーションが最高だ!」
こんな意見がよくSNSで飛び交ってたのを覚えています。
最初からFUJIFILMユーザーだった私としては、「なんかFUJIFILMが盛り上がってて嬉しいなぁ。ふふ。」という思いだけでした。当時は。しかし、趣味が副業となり仕事となっていく中で、画素数が増えても結局、APS-CはAPS-Cであってフルサイズの代用にはならない、という感覚が強くなりました。
もちろんAPS-C機のメリットもたくさんあります。私はオーケストラのコンサートなど、遠くから望遠レンズで撮る仕事も多いので、そういう場面ではフルサイズよりやや短いレンズで対応できることは有利です(この点は、野鳥を撮影する人も同じかもですね)。暗所での撮影なのでISO感度的には不利でしたが、X-T5では特にノイズも気にならなくなりました。
そして何より小さくて軽い。ボディもレンズも。
機材が増えるほどこのメリットは大きい。
一方、ボケの豊かさや、写真としての奥行きの広さという意味では、やはりフルサイズでしか表現できないものがあります。とはいえ、SNSに投稿してる限りは違いも感じにくいですけどね。
「撮る」という行為が変わる。

「フィルムカメラは一枚一枚を丁寧に撮る感覚がある」
「フィルムで撮ると写真と向き合ってる気持ちになれる」
こんなコメントをよくSNSで見かけますよね。確かに言う通りです。私もたまにフィルムで撮りますが、フィルムが高額なこともあって、どうしても丁寧にフレーミングして撮ります。
こういう撮るという行為の感覚の違いは、フィルムとデジタルの間だけではなく、レフ機とミラーレスの間にも存在するように感じます。肉眼で見えているものがそのままファインダーに映し出されるため、自分で切り取っている感覚が強い。シャッターを切った時の「ガションッ」っていう音が「撮ってる感」を醸成する。などなど。
「あー、写真撮ってるわー」
という強い感覚。
レフ機を買うか迷ったときにThreadsに悩みを投稿したのですが、「ミラーレスはビデオカメラだから」というコメントをいただいて、とても腹落ちしました。ミラーレス機から入った自分にはその感覚がなかったのですが、レフ機を使ってはじめて分かりました。フィルムほどではないにしろ、不思議とミラーレスの時よりも丁寧に撮る感覚があります。
最新が最高ではない。

毎年新しいカメラが発売されます。
ついつい魅力的に感じてしまいますが、最新であることと最高であることの間には大きな隔たりがあります。画素数が上がり、処理スピードがあがり、AF速度が上がり、連写速度が上がり。
もちろん、それらの最新機能のメリットを享受できる人もいるでしょう。例えば、動物、スポート、レーシングなどなど動きの速いものを撮る人なんかは、性能向上の恩恵が多いと思います。ただ、私の場合はオーバースペックなので、不要の長物になってしまいます。
むしろ私にとっては、レフ機の少しアナログ感のある画質や、シャッターのフィーリングが非常に価値があった、ということです。